パンツは履いておけ。

この世は乱世

イヤリング紛失選手権

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 私はほぼ毎日イヤリングを耳に着ける。で、1ヶ月に一個ぐらいのペースで無くす。

 もう、この短い半生で紛失したイヤリングの数が半端じゃない。片方になってしまったイヤリングだけで、私、個展開けるんじゃねぇのってぐらい。

 

「ピアス開けたらええやん」

 

と、夫に言われたが、「痛いの無理」と即座に却下した。

 私はとにかく痛いのがダメなのだ。6階から飛び降りた人間のセリフではないが、この強気な性格に似合わず、コンタクトレンズも入れられないぐらい、実は臆病でナイーブな一面もあったりする。誰かギャップで萌えてくれ。

 

 そんなこんなで、懲りもせずイヤリングを着けて出かけたら、やっぱりまた失くした。お気に入りの奴だったので人知れず泣いた。300円ショップで買ったものとは言え、デザインが気に入っていて、愛着があったので一層悲しかった。

 駅の本屋でふと、自分の左耳にあるはずのそれがないことに気づいて、一気に落胆して、そのまましょげて何も買わずに書店を出てきたのだ。

 

帰宅後、さめざめとした表情で食卓に着いたのだが、だんだん開き直って来て、

「イヤリング紛失選手権あったら優勝できる」

と夫に豪語したところ、バカなこと言ってないで早く夕飯食って風呂入って寝ろ、と言われたので、その日はさっさと夕飯を食って風呂入って寝た。

 

 

◇◇◇

 

 

 イヤリングを失くしたときの、あのショッキングな感じは、誰かに嫌われていることをうっかり知ってしまった時の感情に似ていると思う。

 人づてに悪口を聞いたとか、SNSブロックされてたとか、そういうことがあった時、あばらの隙間を縫って、不意に心臓へアイスピックを刺されるようなあの感じ。

 そして、イヤリングを落としたことに気づいた瞬間も、それに近い感覚に襲われるのだ。

 

 友人もイヤリングも失くしまくって来た私が編み出した経験則では、友人だろうとイヤリングだろうと、失くした日はさっさと食ってさっさと風呂入ってさっさと寝るに限る。心がヒリヒリと擦りむけている日は、何をやっても上手くいかない。

 でも、次の朝起きたら、その傷口は、ぷっくりとかさぶたを作り、回復を仕掛けていることが多いし、イヤリングのことは割と忘れてる。

 失ったのが人の場合は、親密度にもよるが、しばらくの期間無心で食って無心で風呂入って無心で寝る、を繰り返せば、これも割とどうでもよくなってくる。その人だけが自分の人生を構成するすべてじゃないよなって、開き直れる。むしろ怒りすら湧いてくる。所詮、そんなもの。

 

 人とイヤリングを一緒にするなと言われたら確かにぐうの音も出ないが、色々共通するところは多いと思うのだ。

男性にはあまりピンとこない話題かもしれないが、頷いてくれる女性がいることを信じている。

 

 

 今まで失くしたイヤリングの数と、切った人間関係の分だけ、強く生きていきたい。そんな事を考えながら、今日もイヤリングを着けて出かけたら、また失くした。泣いた。さっさと夕飯食ってさっさと風呂入ってさっさと寝ます。