パンツは履いておけ。

いろいろはみだしてる人の人生備忘録

青春は永遠の形をしている

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初めて告白する。

私が中高一貫の女子校を辞めたのは、同性の子を好きになったことを周囲に否定されたのがきっかけだった。

 

私は中学三年生の春、同じクラスの女の子に恋をした。

 

その子は、キリというあだ名で呼ばれていた。ボーイッシュで、剣道部のエース。言動もユーモアがあって、勉強が出来て、何もかもがカッコよくて、私は性別を超越した恋愛というものを初めて味わった。

 

"性別を超越した恋愛"——大人になって、しかもジェンダーを専攻している今思うと、恋愛において性別という垣根を設けるのはナンセンスだと承知している。

しかし、当時はやはり異性間の恋愛を「フツウ」という世間一般の認識を肌で感じていたのだ。

 

ただ、私は、それを全く背徳的なことだとは思わなかった。

だって、同性だって好きなモンは好きなんだもん。

 

私はキリちゃんに近づきたくて、毎日彼女とお弁当を食べようと誘った。

キリちゃんは、全く嫌がる素振りをせずに、私をいつも快く受け入れてくれていた。

キリちゃんは、多分、私がちょっと「フツウ」じゃない想いを抱えていることにも気づいていた。

分かっている上で、うまく距離を取ってくれたのが、彼女の優しさだったのかもしれない。

 

 

◇◇◇

 

 

ある日の放課後、私は教室で開催されていた帰宅部の子たちの恋バナに参加した。

斜陽がさす教卓の近くで、集まって談笑。

だれだれが同じ小学校だった男の子と付き合っているとか、〇〇先生独身かなとか、そんなもん。女子中学生だし。

気が付いたら、教室の戸締りをしに来た、独身の若い副担任も加わっていた。生徒から「彼氏いるの~?」といじられた彼女は、顔を真っ赤にした。生徒たちみんなで、ヒューヒューという冷やかしを浴びせる。

 

そんな中、「オトメは好きな人いないの?」と言われた。

私は、少し恥じらいながら、答えた。

 

「キリちゃん、いいと思ってるんだよね」

 

 

次の瞬間、どっと笑いが起こった。

 

「ウケる!レズじゃん」

「でもわかるー!キリちゃんが男だったら彼氏にしたーい!」

 

私は笑いの意味が分からなかった。

今までの話の流れのように、「ヒュー」とかそういう冷やかしが来るもんだと思っていたから。

豆鉄砲を喰らったような顔をしている私に、副担任が追い打ちをかけた。

 

 

「大人になったら「フツウ」になるから、大丈夫だよ! 女の子同士の恋愛は青春の特権だもんね」

 

そう言い放った、大学を卒業したての、あどけない顔立ちの副担任の笑顔が、未だに夢に出てくる。

 

 

◇◇◇

 

 

私はこの事件をきっかけに、学校の教師というものに不信感を持つようになった。

同時期に父のアル中が酷くなり、母親が必死で取り繕っていた家庭は綻びを見せ始めた。学校でも家庭でも自身の中でも、男と女の狭間で揺れる私は、自分が何者なのか分からなくなり、ゆるやかに鬱の沼へ足を取られていった。

学校でも色々な先生に相談したが、カウンセリングに回されるばかりで、担任や副担任ときたら私を全く相手にしなくなった。学校も休みがちになり、クラスメイトからも「メンヘラ」と揶揄され、引かれるようになった。

当然だが、その精神状態では成績もみるみる下がり、それまで学年トップだった私を誰もチヤホヤしなくなった。都合のいいときだけみんな「頭のいい友達」とか「自慢の生徒」とか、私との繋がりを主張して、頼って来て。でも、私が困っている時には誰も手を差し伸べてくれない。「フツウ」じゃない私を、誰も認めてくれない。

 

そんな世界ならぶっ壊れてしまえと、ベッドの中で3億回ぐらい呪詛をつぶやいた。

 

 

私が精魂ともに尽き果てて、その女子校を辞めることになったとき、キリちゃんは手紙をくれた。

そこには、「オトメのことをきちんと分かっていたのに、何も出来なくてごめん」と書かれていた。私はキリちゃんにメールした。「迷惑かけてごめんね」って。

キリちゃんは、「ちっとも迷惑じゃなかったよ。オトメみたいな子、初めて会ったから楽しかった。私もオトメが好きだったよ」と返してくれた。

 

それが、どういう意味の「好き」だったかは、今となっては知る由もない。

キリちゃんとはそれから二度と会っていないし、連絡もしていない。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

副担任のいうところでの「フツウ」になったのだろうか。

私には、現在夫がいる。夫は、性自認も戸籍上の性別も"男"である。

パーフェクトな異性愛がここに爆誕したかのようにも思えるが、私は今でも女性に心ときめく時がある。(旦那ゴメン)

性的指向でいえばバイセクシュアル寄りだろう。

 

そんなこんなで私はジェンダーを勉強しているが、やはり何をもって「フツウ」なのか未だに分からない。

 

性は虹のようなものだと、ある先生から教わった。

曖昧なグラデーションで、どこを取っても一か所として同じ色はない。

それぐらい性はバリエーション豊かなものであるのに、多くの人々はそれを無理矢理パーテーションで区切って、男と女にキッチリ二分しないと気が済まないらしい。

 

 

 「同性愛が青春の特権」?

笑わせんな。

もし、青春を過ぎたら異性愛しか許されないのであれば、私は一生青春してやる。

アンタみたいに、視野の狭い大人になんかならないで、誰に何と言われようと、後ろ指を指されようと、モラトリアムして、心ときめく女の子にキャンキャン歓声を上げていたい。その方が老けるのも遅そうだしね。超アンチエイジング。

 

と、あの時の副担任を小突いてやりたい今日この頃。今頃老けに老けまくって、シワッシワの顔してるんだろうな~。

 

 

 

パンツは はいておけ: 中卒フリーターが大学進学した話

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