パンツは履いておけ。

いろいろはみだしてる人の人生備忘録

お兄ちゃんは無職ドクター

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kindle書籍化のことも相まり、最近重暗い話しか書いていない気がするので、いちおうポップな話題でも書いておこうと思う。

 

育った家庭のことをボロクソ書いている私だが、一応人並みに兄弟との思い出はある。

 

 

何度かブログ中でも述べているが、私には三つ上の兄と双子の弟がいる。

弟とは一家離散してから疎遠になってしまったのであまり書くことがないが、三つ上の兄とは今も交流がある。

 

 

今回はこいつの話を少ししようと思う。

 

 

 

 

私の兄は、とにかくヤバい。

一言で表現するのであれば「狂人」。

 

 

彼のぶっ飛んだエピソードは幼少期から存在している。

幼児教育に熱心だった私の母親は、小学受験を控えた兄を、英才教育専門の塾に入れさせようとした。

そこで入塾テストとして知能指数を測定されたのだが、なんと5歳児でIQ150もあったのだ。

その結果、「この子は神童すぎて、うちのような塾ではお預かりできません」と職員に畏怖され、断られたという経緯を持つ。

 

「やっぱり、お兄ちゃんは特別な子なのねぇ……お母さんの教育の賜物かしら」

 

母親は0歳児から兄に英語のビデオなどを見せていた成果だと嬉しそうにしていたという。彼女はそれを今でも信じて疑わないが、私には異論がある。

 

というのも、IQは先天的なもので、後天的に高めることが難しいと言われているからだ。最近では「大人になってからでも訓練次第で多少は上げることができる」と言われているようだが、当時母親がやらせていた訓練は、あくまでお勉強の訓練である。だから、それでIQが鍛えられたとは思わないのだ。

よって、私は、その数字は兄が先天的に得ていたものに違いないと確信している。

つまり、兄は末恐ろしい5歳児だったのだ。

 

ちなみに後年、発達障害を疑われた私が心療内科でIQを測定したところ、130あることが発覚した。兄弟間でIQに相関があるのかは分からないが、これはやはり先天的で遺伝によるものではないかと考えている。

 

さて、自慢話のようになってしまったが、話を私の兄に戻す。

 

5歳で神童と呼ばれた私の兄は、その後当然のように名門の中高一貫校に入り、第一志望ではなかったが、ストレートで都内の国立大学に進学した。さらに大学院に入学し、修士を飛び級し、早くも博士号を修める直前である。

 

年相応に人間関係で苦労していた時期もあったようだが、私に比べると彼の人生は比較的マイルドであった。

奇人だが、人に対する思いやりを備えていたため、それが他者との関係を構築するうえでの緩衝材になったのだろう。

 

兄は、いつも私のことを心配してくれていた。

一家離散後、私と兄は離れて暮らしていたが、鬱になって引きこもっていた中卒フリーターの妹と、それに憔悴している母親を心配して、時折私たちが住むマンションに様子を見に来てくれていた。

 

ある日、そんな私を見かねて、兄が買い物に誘ってくれた。

 

ここまで聞くと、本当にいい奴であるのだが、問題は別のところにあった。

 

 

JR吉祥寺駅のバスロータリーの前で待ち合わせると、何故か横ボーダーのチノパンと横ボーダーのTシャツという囚人スタイルの兄が現れた。

 

 

お前……その格好でよく来たな!!!!

 

 

住みたい街ランキング1位のオシャレなシティ、吉祥寺も形無しである。

サンロードを歩く私たちはものすごい注目を浴びた。

前を歩いていた男子高校生は、私たちを何度も振り返り、クスクスと笑う。

 

「え?カップル?」

「……いや、顔似てるから兄妹じゃね?」

 

私は羞恥で顔を赤らめながら歩いた。

こんな思いをするなら引きこもっていた方がマシであった、と。

 

だが、兄はそれを全く気にしていない様子で、呑気に買い物にいそしんでいた。

妹の心兄知らず。

つまるところ、私の兄は異様なまでに洋服に無頓着なのである。

ちなみに、それから二度と、私は兄と二人きりで外出していない。

 

 

私の兄の洋服への無関心さは、今でも健在である。

吉祥寺囚人ボーダー服事件から数年後、私は大学受験のため、母親との二人暮らしを解消し、兄が住む実家に出戻った。

母親との仲が最悪で、一緒に住んでいると勉強どころではなかったためだ。

 

ある日、朝起きると、兄が中学生の時の体操服を着ていた。

しかも、私の。

 

どうやらクローゼットの底にあった衣服を掘り出して、適当に寝間着にしているようだ。それが妹のお古であろうが、お構いなし。

 

その姿に、私は絶句するしかなかった。

 

兄はそのまま大学に行くと言って、「3年3組」という所属と私のフルネームが描かれた体育着のまま颯爽と家を出ていった。

 

私は玄関まで出て兄を見送った後、その後姿を眺めながら、「いや、そのまま出かけんのかよ……」と呟いた。

 

これ以外にも、風呂あがりにフルチンのままリビングでスプラトゥーンをしていたり、保護猫を我が家に迎えることになった時「ぬくもりを感じさせてあげたい」と言い放ち、前日から用意していた猫ベッドで体育座りをしていたり、彼の奇行を挙げるとキリがない。

 

そんな兄は、今年の秋、無事博士号を取得して、来年の春から大学に残り研究を続けながら教員になる予定である。

 

おめでとう。

 

今年の10月に大学院卒業だから、半年無職になるけど、おめでとう。

 

妹は、応援しているよ。

 

 

 

そんな兄の妹の半生を描いたエッセイは、10月31日(水)発売です。

毎度の販促乙。

 

パンツは はいておけ: 中卒フリーターが大学進学した話

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