パンツは履いておけ。

いろいろはみだしてる人の人生備忘録

強くてニューゲーム

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私は母親の人生をリベンジするために生まれた存在だった。

 

母親は、医師だった。

 

絶対に食いっぱぐれない最強のライセンスを持ち、結婚せずに生きていくという道を選択できた女性だった。

 

ただ、母親の周囲の大人はそれを認めなかったようで、「そろそろ女としての幸せを掴みなさい」と日々小言を浴びせられていたのが、かなりコンプレックスだったらしい。

 

急かしに急かされた母は、見合いで知り合った、金も、学歴もない、偶然縁だけがあった私の父と結婚することになった。そして、私が生まれた。

 

 

◇◇◇

 

「結婚すればどうにかなると思った」

これが母の言い分であった。

だが、所帯を持ったところで人間が急に変わったりするもんか。

そりゃ、変わる人もごくまれにはいるかもしれないが、私はあまりそういう例を身近に聞いたことがない。

要するに、三つ子の魂百まで、アル中の気質は親になっても、ということだ。

 

私の父親は、酒瓶を振りかざし、暴れた暴れた。

 

このような環境で私を含む3人の子どもを抱えた母の口癖は、

「パパみたいにならないようにちゃんと勉強しなさい」

「学のある人を結婚相手に選びなさい」

だった。

 

とくに母は、2つ目の言葉を私によく浴びせていた。

きょうだいの中で唯一の女子、娘。

言うなれば、私は母の分身だった。

 

さて、「強くてニューゲーム」という言葉をご存じだろうか?

一度クリアしたゲームにおいて、クリア後のステータス状態で再びゲームを開始できるというシステムだ。

人生はしばしばゲームに例えられることがあるが、私の状態はまさにこれだった。

 

母親は自身の人生での過ちを反省材料とし、そこから編み出された最強の教育とやらを分身の私にすべて託した。そして、自分が生涯成し得なかった自己実現を私にゆだねたのだった。

 

つまり、ホワイトカラーになれるほどの頭脳を持ちつつも、女らしいことが出来て、男性から選ばれる女性であれ。

 

こういうことだった。

 

私は兄や弟と同じく、塾や英会話教室などに通わされたが、「日本舞踊」「ピアノ」のお稽古が女の義務として追加されていた。

熱が出て、吐いても、練習に、発表会に連れていかれた忌まわしい記憶。

(このせいで後年に嘔吐恐怖症をこじらせた)

弟と兄が勉強を終え、鼻を垂らしながら外を駆け回っている最中も、私は母親が実現しえなかった「女としての幸せを掴める女」になるための訓練を強いられていた。

 

つまるところ、私は母親に、息子として、娘として育てられたのだ。

強くてニューゲーム、そのために。

 

◇◇◇

 

 ゼクシィのCMのように、「今は結婚する人も結婚しない人も幸せになれる時代だよ」と若かりし頃の母親に囁いてくれる人がいたら、彼女はどうなっていたのだろうか。

 

たぶん、私は生まれていないと思う。

そんなifを想像すると、それはそれで、なんだかしょっぱくて、切ない。

 

きっと、私は何か意味があって生まれてきたのだと思う。

 

私は、母親の理想通りの女の子になれなかった。

日本舞踊やピアノで身に着けたはずのしなやかさな所作は、遥か彼方に消え去り、今じゃ、風呂から上がった後はすっぽんぽんでスマホ、ごはんのことは「メシ」と言う、髪の毛は短く刈り上げ、あの頃の母親が見たら卒倒しそうな言動を繰り返している。

 

母親と言えども、私は他人の人生のリベンジのため生きる気は、サラサラねえんだ。ごめんな。

 

私がこのように反発心から男らしい言動をするようになった10代後半から、母親は何かを悟ったように、急に「別に結婚なんかしなくてもいいのよ」と言い始めた。

 

 

 

 

 

 

だから、私は、私を理解してくれる男と結婚した。

 

 

天邪鬼。

 

 

このような半生から、私は、ジェンダーやセクシュアリティについて貪欲に情報を吸収し、創作・研究方面の両方から表現したり発信したり、それによって誰かに気づきを与えられたらいいなとか、いっちょ前に思っている。

それがきっと、私の生まれた意味ってやつなんだろう。

 

 

 

 この辺の、母と娘の関係は、10/31発売予定の当ブログkindle化コンテンツ「パンツははいておけー中卒フリーターが大学進学した話」でより深く考察したものを収録します。

私が母親に初潮が来たことを隠してた時のとんでもねぇエピソードも赤裸々に掲載したので、興味があったら覗いてみて下さい。

販促乙。

  

パンツは はいておけ: 中卒フリーターが大学進学した話

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